【寸評】☞ 示唆に富むタイトル通りの内容。スケールの大きさは著者のブログそのもの。
トップブロガーによるセルフブランディング術
ブログの出発点
昨年、10年ぶりにブログをやってみようと思い立ち、「いまどんな方がトップで活躍されているのか」調べたときに、コンテンツの方向性や運営スタンスに真っ先に興味を引かれたのが、今回取り上げる著者の超人気ブログである『Chikirinの日記』でした。
他にもいくつか気になるブログはありましたが、「まずは自分で始めてみることが先決!」と思い、ITインフラとテクニカルな立ち上げ手順以外について、いわゆる“ハウツー本”の類は意識的に手には取らず試行錯誤で進めることにしました。
ただ以前に自分がやっていた頃のブログに比べて、いまはアフィリエイトやSEO対策などが過熱した“浮利を追いかけるレッドオーシャン市場”というか、言い表せない居心地の悪さを感じるモノになっていて、実は今回再開するにあたってはそこが一番の悩みどころでした。
【書籍紹介】「自分メディア」はこう作る!
で、今回ご紹介するのが、前述『Chikirinの日記』を国内最高峰の「自分メディア」に育てあげたちきりんさんが“手の内”を明かした著書です。
この本、私にはすごーく参考になったのですが、どなたかの口コミにあった通り、いわゆる「ブログの入門書」を期待して読むには少し毛色が違うと思います。ただ、本業がマーケターというだけあって、立ち位置の取り方から運営方針まで徹底的に考え抜かれています。
なぜ「ちきりん」なのか、なぜ「日記」なのか、なぜ「匿名」なのか、なぜ、なぜ、なぜ…とどこまで深掘りしても明確でシンプルな基準に基づく「意思決定」が存在し、それが一気通貫の戦略としてしっかり整理されています。
「何を聞かれても(一つ一つの行動に理由があるので)意味を答えられる」という状態は、常に“判断”を意識しているが故。その基準となる“ブレることのない人生観や仕事観”が根底にあり、その価値観についても私自身共感できる部分がたくさんありました。
時を告げるのではなく、時計を作る
ちきりんさんの説明は「何に価値を見出し、どう考え判断した(結果どうなった)」という思考のエッセンスを整理しつつ、それがどういう形でアウトプットされるのか後半で成果物を示すというとても親切な構成になっています。
他の口コミに「これは“ちきりんさんだからできること”なので、あまり参考にならない」という意見もありましたが、“マネ”はできなくても“学べる”し“使える”はず。咀嚼力、想像力、類推力を発揮すれば、我が物とすることは十分可能です。
お手軽に流用できるノウハウを手にしたところで(差別化できていないため)結局は競争力なく過当競争にさらされるだけのことですし、書中でちきりんさんはそのあたりかなり慎重に論じていらっしゃったと思います。
総評
表層的な汎用テクニックではなく、本質的な思考アプローチやポリシーに関する議論は、まさに著者の「自分をコモディティ化せずにうまくブランディングしなさいよ」という意図の表れであり、書中の論点とも整合していると思います。
「自分メディア」を持つことの意義と楽しさ、そしてその育て方について、変に話を一般化してしまうことなく、自身の経験を事細かに例示しつつ、これまでの成功との因果関係を解き明かしている点、ちきりんファンならずとも非常に参考になる、示唆に富んだ一冊です!
「自分メディア」はこう作る! 大人気ブログの超戦略的運営記/ちきりん 価格:1,080円 |