『資本主義の再考~共通価値の創出~』
企業の社会貢献のあり方
今回は「Five Forces」をはじめ数々の競争戦略論におけるフレームワークを提唱して、ハーバードビジネススクールで一時代を築いたマイケル・ポーター教授のある意味「ビジネス観の集大成」とも言えるスピーチをご紹介します。
このインタビューは、2011年1月にハーバードビジネスレビューで発表された同名のアーティクル(論文)に関する教授自身による解説で、非常にわかりやすい例を用いて話しています。
基本的にこの論文の主軸をなしているのがCSV(Creating Shared Value)というコンセプトなのですが、それは「資本主義の弊害」とも呼ぶべき“ビジネスと社会の関係における悪循環”を解消することを目的としています。
「資本主義」の再定義
旧来ビジネスは「資本主義」の名のもとに、ややもすれば非常に狭い視野で企業営利を追求する傾向にありますが、あるときから政府は企業が社会に与える弊害(公害などの社会的コスト)を問題視し、規制し抑制を強化し始めました。
企業は「主たる社会貢献は雇用創出であり企業が豊かになれば人々も豊かになる」というスタンスですが、氏曰くそれでは不十分との見方。企業にSustainabilityがなければ解雇やサプライヤーとの取引打ち切りという形で結局のところ社会的コストは増大することになります。
ある意味“鶏と卵”ですが、企業が利益を得ることはひいては社会にもプラスになるという発想で製品を顧客へ売りつける方法を考えるのではなく、社会的要請のあるビジネスを行えば必ず企業は利益を生むという資本主義に関する逆転の発想を氏は提唱しています。
「社会と企業の利益は中長期的に背反しない」―企業が社会に対してできることを真剣に考えた場合、それは社会にとってだけでなく、企業にとっても潤沢な利益を生む共通の価値(Shared Value)を創出する(Create)ことになるのだという発想の転換なのです。
CSRの限界
たとえば、従来型のCSR的「公正取引」でサプライヤーにも利益を落とすということでは
氏はこれを戦略の次章を考えるときに重要なコンセプトと位置付ける。